物事に感動し共鳴する胸奥の心情を表現するのに琴線に触れる、という言葉がある。琴線の語源は西欧のハープなど弦楽器から生まれたという。
先日、私はハープ演奏家、池田千鶴子さんの演奏会を訪れた。
ハープの音色はまさに琴線と呼ぶに相応しいものであった。またやさしく調和したメロディと同じく、力強い弦の響きに身体の奥底を震わせた。
 海外での演奏機会も多いという池田さんには、忘れられない出来事があるという。
失明したばかりの外国人女性は、突然の失明という事態にショックで混乱していた。そんなとき、友人から誘いを受け、池田さんのハープを聴き、感動した。コンサート後、楽屋裏を訪ね、池田さんに向かって点字を習う事を約束し、立ち直るきっかけを得た。
また片足切断で車椅子に乗った二十代の女性がいた(日本人)。彼女はもう片方の足もすぐ切断しなければ命が危ないと医者に言われていた。絶望とわずかな望みのなかで、彼女の心も乱れていた。そんな時、池田さんのハープと出会った。
ハープは若い彼女の心に今を生きる勇気を与えた。こみ上げるものをおさえながら演奏直後の池田さんのところへ行き、もう片方の足の切断を決意した。
 ハープの音色は、やさしく温かい。しかし、その調べは人の心を時として内省的にする。くじけそうな心を奮い立たせる激しさがある。ハープは心にそっと寄り添い、励ましてくれる、そんな楽器なのかもしれない。